The Woman in Black

ロンドンのFortune Theatreで19年間ロングラン上演されている「The Woman in Black」というお芝居があります。日本でも1992年から、ロビン・ハーフォード氏演出で何度か上演されているらしく、その「日本版」が「Japan Week」と称して本家Fortune Theatreに来るという事で、チケットを衝動買いしてしまいました。出演は上川隆也さん、斎藤晴彦さんの二人だけ。なんかホラーらしいけど・・・詳しいストーリーは知らん。でもイギリスで生まれたクラシックなお芝居が日本へ渡り、またロンドンに戻ってくるなんて、それだけで見てみる価値はありそう!

連れがイギリス人だったので、英語字幕が見えるDress Circleの席を取りました。とても小さな劇場でしたがほぼ全員日本人で埋まっていました。せっかくだからイギリスの人の反応も見たかったんですけど、上川さん人気者だし仕方ないか。ちなみに私の連れはとても楽しんだみたいです。
物語は、小さな劇場で弁護士のキップス(斉藤晴彦)が台本のようなものを読み始めるところから始まります。彼は過去に恐怖体験をしていて、その悪夢から逃れる為に家族にその体験を話そうと決心し、若い舞台俳優(上川隆也)を雇って練習を始めたのです。ところが、キップスの棒読みっぷりに飽きれた役者は、自分が若い日のキップスを演じて、その他の役をキップスが演じる、という提案をし、二人の稽古が始まります。

キップスの恐怖体験というのは始め、すごくありきたりな「幽霊のお話」な感じがして、見ていても全然怖くなさそう。ところが話が進むにつれてじわじわと恐怖感が増してきて、最後の方はジェットコースターのようにたたみかけてくる演出に「ぎゃ〜もういいです〜!!!」という感じでした。そもそもイギリスの片田舎、隔離された古いお屋敷(墓地付き)に1人で寝泊まりするなんて、想像しただけで無理。

イギリスと日本の恐怖感って共通する部分があるのか、単純に脅かしたりグロテスクなものを見せるよりは、「リング」のような精神的な気味の悪さが根本にあり、また「劇中劇」というちょっと複雑な設定の中真相が明らかになるにつれて、怖さや嫌悪感が雪だるま式に増していくので、日本での人気も納得です。

それにしても舞台装置も出演者も本当にシンプルなのにこれだけ「恐怖感」を作り出す上川さんと斉藤さんに感動。上川さんは始め、少し大袈裟とも思えるようなトーンで若いイギリスの青年を演じていましたが、後半ど迫力の演技で恐怖感を表していました。反対に何か思い詰めたような静かな「キップス」からその他の役すべて、コロコロと変わりながら演じていく斉藤さん。観客の想像力をどれだけ掻立てられるか、シビアな状況の二人芝居だと思うのですが、さすがプロ。コミカルなシーンから張りつめたシーンまで一瞬たりとも見逃せません。

言葉は日本語なのですが、会話の内容はとてもブリティッシュ。演じ方は日本的かも知れませんが、二人の格好も設定も演出もとてもブリティッシュ。そんな不思議な雰囲気が味わえる舞台でもありました。こうなってくると本家を見に行かなくては・・・。

詳しい情報はこちら。(英語・日本語)
The timesの記事はこちら(英語)。

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