もう少し、優しくなれたら

なんか昔のJ-POPバラードみたいなタイトルになってしまいましたが、アフガニスタンのニュースを見ながらこの記事を書いています。国から逃げようと飛行機に飛び乗る人々の姿、通りから消えた女性の姿、その絶望感は想像できません。うまく国から脱出出来たとしても、この先難民として他の国で受け入れられるかどうか、決して簡単な道のりではないと思います。日本で暮らしていると難民問題をニュースで見聞きする事はあっても、日常生活で関わりあう事はあまりないかも知れません。私も実際イギリスで暮らし始めて、自分が「移民」になってみて初めて査証のシステムについて色々意識する事になったし、ヨーロッパを取り巻く状況を見て色々と考えるようになりました。個人の小さな経験ですが、少しシェアします。


スウェーデンに仕事で行っていた2015〜2016年ごろは、ちょうどヨーロッパ各国が多くのシリア難民を受け入れていた時期でした。電車を降りた駅前の広場で、大きな荷物を持って今しがたついたばかり、といった雰囲気の一団を見かけて、「あぁ、そういえばニュースでやっていたな」と思ったのを覚えています。

一度、スーパーマーケットで買い物をしていたら、私が持っていた買い物かごにいきなり大きなお肉を入れられた事があります。びっくりして入れた人の顔を見ると、中東風の格好をした女性で、カタコトの英語で「私たちはお金がないから、あなたが買ってくれ」というような事を言われました。人生で買った事がないような大きさの肉の塊(!)で、慣れないスウェーデンのスーパーで値段もよくわからなくて、ちょっと困る、というような事を伝えようとしたら、相手は怒り出してものすごい勢いでまくしたてられました。助けてくれないのか、困っている人を見捨てて恥ずかしくないのか、と。この時点で完全にパニックになった私は逃げるようにその場を立ち去ったのですが、後でものすごい罪悪感が込み上げてきました。よく考えたらスーパーマーケットで売ってるものだし、いくらなんでもそんなに高くない…よね?どうして快く買ってあげられなかったのか。もう完全に、日本では考えられないような状況— —いきなり知らない人がカゴに品物を入れてきた、しかも言葉もよく通じないけどなんか自分に対して怒っている、その怖さが勝ってしまったんですね。

同じ時期、会社で一緒に働いていたITシステムの担当者がいました。すごくフレンドリーで、イギリスから出張で来ている日本人の私に気さくに、親切に接してくれていました。ユーモアもあるし、IT管理者としてもとても優秀な人でした。ある時、その人も理由があって母国から逃れて来た事を知りました。これだけ才能もスキルもあって、人間的にも魅力のある人。どんなに真面目に生きて来ていても、母国を離れなければならない事もあるんだと、驚いた事を覚えています。彼が転職してしまった時はものすごく寂しかった。

また、難民ではありませんが、大学で一緒に学んだ友人の一人に中東の国からきた女性がいました。モデルのようなスタイルの美人で、おしゃれが大好きで、ちょっと強引かつ豪快(笑)な性格に「いや〜引っ込み思案の日本人の私、ついていけない〜」と思った事も多々あります。が、お互いクラスの中で英語ができない方だった事もあり、色々と共感する部分があって、今でも連絡を取り合うほど仲良くなりました。私が日本に帰ると伝えた時、彼女は「あなたは自分の国に帰れて羨ましい。私は自分の国は美しくて大好きだが、帰れない。欧米の企業で働き、欧米の価値観に馴染んでいる自分は、帰ったら逮捕されると思う。」と言っていました。

言葉が通じない人、日本とは違う感覚を持った人とのやりとりが心底「怖い、関わりたくない」と思った事も、同僚、友人として何も気にする事なく一緒に笑ったり励ましあったりした楽しさも、どちらも私のリアルな気持ちです。でもネガティブな方は、一度経験したからこそ、もし次同じような状況になったらもっと相手に配慮しながら対処できると思います。巨大な肉の塊でも怯まない!

日本に話を戻すと、今回ニュースになっている入管のシステムの問題は酷すぎて問題外なんですが、その先の議論に必ず「日本はもっと難民・移民を受け入れるべきか?」という問いが出てきます。みなさんはどうしたいですか?

難民・移民の問題は今現在国際社会で起こっていることですし、この先気候変動が進めば内戦ではなく、災害から避難して国を出なくてはならない人たちも出てくるかも知れません。私は、真面目に暮らしていたのにいきなり自分ではどうしようもない理由で母国を追われた人たちに、「日本なら安全ですよ、安心して暮らしてください」と言ってあげられる余裕、思いやりのある国でありたい、とは思っています。また、帰りたくないわけじゃない、母国を愛しているのに日本に来なければならなかった人たちが、日本も第二の母国だ、と思えるような国になれたら嬉しいです。ただ、異文化が近い距離に押し込められた時には必ず反発が起きるし、きれいごとだけでは済まないのもわかるし、自分自身が難民サポートをできているわけでもないのに、「日本は冷たい!酷い!」と言うのも何か違う、自分で自分にモヤっとする…。

でも少なくとも、欧米の姿を見ていると、そういう葛藤も含めて向き合おうという姿勢がある気がします。日本も国際社会の一員でありたいのであれば、その問題意識、葛藤は共有した方がいいと思うのです。なにより、門を開かなければ、体験してみなければ、自分たちがどこまでできるのか、可能性を見極められない…。

中東からニュースが届くたびに、私は同僚や友人や、あの時しっかり顔を見られなかったスーパーで出会った女性の事を思い出します。日本の難民認定率1.2%、もう少し高くてもいいのではないでしょうか。

なぜ日本は難民をほとんど受け入れないのか – BBCニュース

ドイツやカナダで難民認定を申請すると、その約40%が認められる。英国では30%以上だ。しかし日本では、認められるのはわずか0.2%。しかも判断を待つ間の扱いは過酷だ。

気候変動や災害による避難に関するよくある質問|国連UNHCR協会

2016年11月6日 ― マラケシュで開催された第2回締約国会議(COP22)での、気候変動と避難に関するよくある質問に対する回答です。 …