「充実した時間」というプレッシャー

An image of a cat

在宅勤務になってからもう3ヶ月近く経っている。医療現場で頑張っている方々や、インフラに関わる仕事をしていらっしゃる方々の状況に比べれば、パソコン1つで仕事ができて満員電車に乗らなくてもいい自分の状況はとてつもなく恵まれている。多少の不便はありつつ、ある程度快適に暮らしてはいるのだけれど、1つだけモヤモヤしていることがある。それは、「充実した時間を過ごさなくては」というプレッシャー。

家で作業していると、1人でできるタスクは速いのだけれど、チームワークも多い職場なので、そういった面ではやはり遅い。また、ことあるごとに猫に邪魔されるので、(これが結構リアルに集中力を途切れさせるのよ)小さいお子さんがいる家庭で在宅で仕事をされている方には本当に頭が下がる。その結果、いつも頭の中で声が響くことになる…「全然進んでないじゃん」「あ〜またここまでしかできなかった」「何やってんの、効率悪いな…」この声は実はGW中など休みの日も続いていて、外に出られない分「本読まなきゃ」「ブログでも書いて情報発信しなきゃ」「大掃除しなきゃ」「オンラインコース受けなきゃ」とか、とにかく何かに追われているような焦りを感じていた。

ちょっと話は変わるのだけれど、私は今までに2度ほどうつ病を経験している。1度目はイギリスへ行く前、2度目はイギリスの最後の3年ほど。イギリスでは幸いなことに、いいカウンセラーさんといいお医者さんに巡り会えて、うまく治療ができた。その話もいずれ書きたいな〜なんて思っているのだけれど、治療していた時に私が一番苦労したのはこの「頭の中でのダメ出しの声」だった。とにかく何かしていないと落ち着かなくて、生産的なことをやっていないと頭の中で声が再生され始め、うつの症状に燃料を注ぎ続けた。何もしていない時間を「人生を無駄に過ごしている」みたいな感覚で捉えてしまうクセがどうしても治らなかった。

本当の意味での休む、というのは実はけっこう難しい。マインフドフルネスを勉強したり坐禅を組み始めてからけっこう意識できるようになってきたんだけど、思考も含めて休ませることができるようになるには相当なトレーニングが必要。さらに日本で生まれ育ってきていると、勤勉な文化が災いして、この感覚はさらに強くなると思う。

初めてustwoの社内旅行に行った時、観光に出かける訳でもなく、スケジュールいっぱいにする訳でもなく、プールサイドで本を読む、というホリデースタイルが衝撃だった。正直最初は、せっかくの旅行なのにもったいない!と思ってしまった。でも、普段通勤、仕事、ソーシャルなど時間に追われている現代人にとって、本当に贅沢なのはただ寝そべっていられる時間なのだ!それに気づいてからは、個人で旅行するときも観光する場所よりもホテルにこだわるようになった。少しいい部屋に止まって、本当に行きたいところだけに絞って、あとは公園でダラダラしたり、ホテルの部屋で本を読んだり。(ちょっと非日常にしたいので、実はエアビーよりもホテルの方が好きだったりする)

この応用編で、特に旅行の計画もなく、ちょっと長めの休みがあるとき、いつもやることがある。正確には、気が乗らない時は本当に何もしない、ということ。とことん気分に従う。とことんサボる。下手するとめんどくさいと感じていたら食事さえ飛ばすことすらある。1日くらい食べなくても死なないし。(まぁすぐにまたお腹減るんだけど。)大事なのは、ここで頭の中のダメ出しをしないこと。「そろそろ動かないと」という声が聞こえ始めたら、「ま〜いいじゃん、やることないし」と切り返す。面白いのはここでダメ出しの声に負けてしまうと、逆にダラダラを止められなくなることが多くて、罪悪感を感じながら休む、という状態が延々と続いてしまう。でも、罪悪感に負けずにダラダラしていると、不思議なことにちょこっとやりたいことがポッと出てくるようになる。この、小さな「やる気」を逃さない!そうすると、休みの終わりに向かってどんどん幸福感が増えていく、という素敵な休暇が取れたりする。

それでも今年のGWはこんな状況ということもあって、いつもより「休む」のが難しかった。この先世界はどうなっていくんだろう、という不安も相まって…。あ〜次にヨーロッパのホテルでダラダラできるのはいつだろうか…。