春琴 @ バービカン (2)

さて本公演、「春琴」。これがものすごく良かったです。多分今まで見た舞台の中でも一番良かったうちの1つかも。

「春琴抄」という谷崎潤一郎の短編小説を舞台化したもので、盲目の三味線奏者春琴と、彼女に仕える佐助のお話。舞台での物語は、現代の日本、「NHKの番組用に朗読を録音している」というナレーターと、その読まれているお話の中で「春琴と佐助のお墓を訪ねて行く」男性と、「春琴の思い出について語っている」歳をとった佐助、そして生きている春琴と若い佐助、と、場所も時間も違う場面が交じり合う構成。舞台装置はとてもシンプルで、それぞれの場面は役者達の使う小道具と、ライティング、舞台後ろに映し出される映像とで抽象的に表現されていました。こうやって書くと複雑でわかりにくそうな感じがしますが、4つの違う時間軸はとてもスムーズに交差し合い、何が起こっているのかはとてもわかり易かったし、それどころかこういう構成だからこそ、まるで映像作品のような、どこまでが現実と妄想が交じり合って綺麗で不思議な空間を作り上げていました。

私が好きだったのは主演の深津絵里さんと、「春琴人形」。物語は春琴が子供の頃から始まるのですが、違う役者さんを使う代わりに、文楽のような人形が登場して、それを「黒子」っぽく黒いスーツをきた深津さんが操る、という演出でした。彼女のかわいらしいけど高圧的な声と、無機質な人形の顔がなんとも言えない独特の雰囲気を作り出していました。春琴が成長するにつれて人形は大きくなっていき、最終的には深津さんになる訳ですが、この変わる瞬間がまた良かった。なるほど!と思いましたが、これから見る方もいらっしゃるかも知れないので、ここに書くのはやめておきます。とにかく、舞台全体を通して深津絵里さんのオーラは迫力満点でした。

とにかく大満足の舞台だったのですが、こんな見事な世界観を舞台上で描き上げた演出のサイモン・マクバーニーさん。深津絵里さんがインタビューで答えていたのですが、お稽古は役者を揃えてのワークショップから始まったそうで、それぞれの場面についてどう思うか、意見を出し合いながら作り上げたそうです。なのでとても時間がかかったとのこと。こういった方法を取る事で元の作品をより深く理解して、そこにサイモンさんの創造力が重なった事によって、ここまで綺麗で引き込まれるような世界が作られたのではないでしょうか。何だか歌舞伎並に「絵」になる場面が多かったなぁ。

こうなってくると彼の他の作品を見たくなってきました。問題は、知らないストーリーを字幕無しで理解できるかどうか・・・だわ。

ちなみに日本では12月に世田谷パブリックシアターにて公演があるようです。おススメです。http://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/12/post_206.html

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