へ〜んしん!

フランツ・カフカです。名前は知ってたけど、初めて読みました。「変身」。けっこう新鮮でした。主人公がある朝目覚めると巨大な虫に変身してしまっていた、という話なのだけれど、「なんで!?」と突っ込む間もなく物語りは進んでいきます。説明もなく、何だかよくわからないまま、でも読むのはやめられない。突拍子もない設定なのに、けっこう淡々と場面が進んで行くのが妙に不気味で、読み終わった後の不思議な感覚はちょっと表現できません。 (以下ネタばれです。)
思えば残酷な話なのですね。主人公のグレゴールはすごく真面目で、責任感もあって、歳をとった両親と、若い妹を養ってきた。多少の事は彼が我慢して働かなければ家族は生きていけないのだから、そう信じていたのですよね。でも彼が(かなりグロテスクな)「虫」という、人間としての生活を全く送れなくなってきてしまった時に、結局彼がいなくなっても家族は生きていける、という現実が見えてきてしまった…のかなぁ。むしろ「養ってあげている」という意識を持つ事で自分のアイデンティティを確保させてもらってただけなのかも知れないよね。もちろん家族にとっても彼がいなくなってしまう事による悲しみも痛みもあるのだけれど、最終的には彼の死によって家族は重荷から開放されるのだから、「私はあなた達の為に自分を犠牲にしてうんたらかんたら。」なんてきっと驕った考えであり、自己満足なのでしょう。人間の存在なんて悲しいものですね。でもこんなに重い話なのに、さらっと書いてしまうところがカフカの凄さ…なのでしょうか。なんだかはまりそうです。 フランツ・カフカ「変身」

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